2008年度は、特定非営利活動法人JIPPO(十方・じっぽう)設立の年であり、設立に伴う行政手続きを行うと同時に、今後JIPPOが柱とする諸活動を立ち上げ、経営計画の整備と推進および事業展開を行った。当法人は、「平和構築」「貧困問題」「環境問題」「災害救援・復興」を活動目的に掲げているが、設立初年度の重点活動領域として「平和構築」と「貧困問題」に注力した。
法人としての財政的な問題、特に法人の活動基盤を支える会員の獲得と拡大およびフェアトレード事業の販路拡大に関してはまだまだ課題は残るが、当法人の理念と人材に賛同してくださる方々の支援と協働、ネットワークの中で順調に成果を出すことができた。次年度以降も、社会に示すビジョンとそれを実現するための地道な努力を継続することで、持続可能な活動を行っていく。
2009年1月19日(月)、龍谷大学大宮学舎清和館3階にて、JIPPOの「設立記念講演会」を開催した。元国連事務次長の明石康氏が「平和構築における宗教者の役割」と題する講演をし、約200名がそれを聴講した。
紛争地域においてその解決に実践的に携わってこられた専門家のお話は、平和構築を活動の柱のひとつとするJIPPOと、それに関心のある聴講者の方々にとって、大きな励みと貴重な教訓となった。

写真1 講演をする明石康講師

写真2 講演をする明石康講師
2008年12月からフェアトレードとしてスリランカ産無農薬ウバ紅茶の販売を開始した。2008年3月31日現在、ティーバッグ281袋、リーフ193袋を販売し、360,985円を売り上げた。JIPPO設立記念講演会、浄土真宗本願寺派のビハーラ関係行事、教化団体の研究会などで試飲会と即売会を開催し、商品を紹介した。また、個人顧客の約半数は、リピーターとして初回購入よりも多い個数を継続してご購入いただいた。
フェアトレードは通常、「公正貿易」などと訳されるが、フェアトレードがどのような定義で何をめざすのかについては、それぞれの団体の活動理念に照らし合わせながら、組織ごとに異なる意味づけを行うのが現状である。JIPPOはフェアトレード指針として以下のことを念頭において活動した。
1) 経済的・社会的に厳しい状況にある生産者たちの生活環境の改善
2) 市場原理の貿易システムにとらわれない、公平・公正・継続的な貿易関係の構築
3) 日本の消費者と現地の生産者との共生を、販売を通して促進させる

写真3 フェアトレード商品のスリランカ産無農薬ウバ紅茶(ティーバッグ)

写真4 同商品(リーフ)
2009年3月8(日)~16日(月)、「ウバ茶を摘む女性たち:フェアトレードの生産現場を訪ねる」と題するスタディツアーをスリランカで実施した。スリランカ研究者でもある中村尚司JIPPO専務理事を筆頭に8名で、JIPPOがフェアトレード商品を購入しているウバ茶の生産地を訪れた。
茶園プランテーションの責任者であるマネージャー夫妻の全面的な協力によって、摘まれた茶葉が製品に加工されるまでの工程を見学し、茶のテイスティングや、茶木の苗木を育てる現場および茶園労働者の住居を訪問することができた。中村専務理事と現地コーディネーターを介して、スタディツアー参加者が茶園関係者や労働者にインタビューを行い、茶摘み作業を体験させてもらった。
茶摘みの作業は、細やかかつ重労働だということがよくわかり、彼女たちの摘む茶葉が、工場で丁寧に加工され、私たちのもとに届くのだということを実感をもって感じることができた。

写真5 ウバ紅茶の茶葉を摘む様子

写真6 茶園労働者に話を聞く様子
昨今の経済情勢の悪化に伴い、京都の野宿者の暮らしもたいへん困難になっている。JIPPOは、龍谷大学ボランティア・NPO活動センター(以下NPOセンターと略称)と協力して、2009年1月から越冬支援事業を始めた。これまで京都の支援団体の取り組みが弱かった、高瀬川と山科川の下流域の橋の下などで暮らす人びとを対象にして、支援活動に取り組んだ。2008年3月末までに3回、物資配給と聞き取り調査を行った。
債権者に追われて家に帰れなくなった人、歯の治療が必要だが社会保険に加入していない人、住民登録をしていない人など、法律相談や医療相談の必要も痛感した。2008年度の試験的な支援活動を基礎に、今後JIPPOとしてどのような支援をすべきか、京都市地域福祉課、「京都・夜回りの会」や龍谷大学(NPOセンター)などの関係者と協議を深めていく。
- 【事前調査】
- ■日時:2009年1月28日(水)および30日(金)
- ■活動場所と対象者:東西高瀬川と山科川に居住する野宿者
- ■活動者:中村JIPPO専務理事、NPOセンター大石課長、NPOセンター竹田純子職員、学生スタッフ
- ■活動内容:支援物資(衣類、食料など)を携行した聞き取り調査
- 【第1回支援活動】
- ■日時:2009年1月30日(金)
- ■活動場所と対象者:東高瀬川(三雲橋から三栖橋まで)川沿いに居住する野宿者7~8名(不在者には、テント外に配給品を残すか、仲立ちをしてくれた野宿者に預けた)
- ■活動者:中村JIPPO専務理事、NPOセンター竹田職員、学生スタッフ
- ■活動内容:支援物資(衣類、食料など)の配布および聞き取り調査
- 【第2回支援活動】
- ■日時:2009年2月2日(月)
- ■活動場所と対象者:西高瀬川沿いに居住する野宿者9~10名不在者には、テント外に配給品を残すか、仲立ちをしてくれた野宿者に預けた)
- ■活動者:中村JIPPO専務理事、NPOセンター竹田職員、学生スタッフ
- ■活動内容:支援物資(衣類、食料など)の配布および聞き取り調査
- 【第3回支援活動】
- ■日時:2009年1月30日(金)
- ■活動場所と対象者:山科川(小野小学校付近から栗稜中周辺まで)川沿いに居住する野宿者9~10名(不在者には、テント外に配給品を残すか、仲立ちをしてくれた野宿者に預けた)
- ■活動者:中村JIPPO専務理事、NPOセンター竹田職員、学生スタッフ
- ■活動内容:支援物資(衣類、食料など)の配布および聞き取り調査
サイクロン被災現場における学校修繕・建設事業の視察(ミャンマー)
- ■目的:今後の活動拠点調査研究に資するため、東南アジアにおける現地NGOの視察を行った。
- ■対象NGO:BAJ(Bridge Asia Japan:ブリッジエージア・ジャパン)…1993年設立、東南アジアを中心に活動するNGO。インフラ整備事業で多くの実績がある。
- ■日時:2008年12月15日(月)~22日(月)
- ■視察地:エヤワディ管区におけるサイクロン支援現場。管区内のデルタ地帯に点在する視察地5ヵ村の学校建設現場およびモバイル・ワークショップのサイト

写真7 視察地(チェッシャー村)
BAJエンジニアが考案した沿岸地域対応型の学校建設現場
政府規定のものより安価(1/3程度)で建設が可能

写真8 視察地(ミャッタルウト村)
沿岸地域対応型学校建設の基礎工事現場
今後の活動拠点調査研究に資するため、デリーに事務所をおく下記3団体を訪問した。
- 【中央チベット行政府教育省】
- ■日時:2008年12月23日(火)
- ■組織の性格:中央チベット行政府(いわゆる亡命チベット政府)の省庁で、主に南アジアに分散するチベット難民子弟の教育を受ける権利の確保と執行。現行の重点活動は、老朽化あるいは資金不足で建設当初から不備のある学校施設の修繕事業。

写真9 デリーにあるチベット難民のコロニー
チベット人が好むタルチョ(五色旗)が建物の上にはためいている

写真10 コロニー入口の様子
- 【インド・ボランティア保健協会:VHAI(Voluntary Health Association
of India)】
- ■日時:2008年12月23日(火)
- ■組織の性格:フェアトレード団体。インド政府保健・社会福祉省と協力して、インド各州に支部を開設し、行政の支援の届きにくい地域に、健康・衛生・家族計画に関する啓蒙活動を行う。現行の重点活動は、①ラジャスタン地震発生後の女性の収入確保事業、②カシミール紛争地帯における女性の収入確保事業、③アルナーチャル・プラデーシュ州における学校修繕事業。

写真11 支援概要について説明をするプロジェクト責任者

写真12 フェアトレード商品を販売する店舗
- 【タラ・プロジェクト:TARA Projects】
- ■日時:2008年12月23日(火)
- ■組織の性格:フェアトレード団体。フェアトレード収益を資金源として、インド国内の困窮地域、被災地、紛争地の支援を行う。在庫を保管しないためのネット販売ゆえ、外国の顧客が多い(インド国内販売は少ない)。現行の重点活動は、①女性と子どものための学習センターの建設・運営、②ビハール洪水被災地支援活動(支援キャンプ2ヵ所、第3フェーズとして医療支援)。

写真13 支援概要について説明をするプロジェクト責任者

写真14 フェアトレード商品(アクセサリー)を作る女性たち
- ■研修名:マスターファシリテーター養成講座(上級編)~フィールド実践トレーニング~
- ■日時:2008年12月24日(水)~29日(月)
- ■研修の目的:参加型開発研究所主催の「マスターファシリテーター養成講座」(中級編)で、研修受講経験のある者を対象にし、講座で学んだファシリテーション技術を、南インドの農村をフィールドとして、実践トレーニングを行う
- ■研修生:3名(①(社福)大阪府社会福祉協議会
社会貢献室 高齢者医療・健康・福祉サポート機能等支援員、②元国連人口基金東京事務所 研究員/コミュニケーション・コンサルタント、③榎木美樹:JIPPO事務局員)
- ■講師:和田信明(特定非営利活動法人SOMNEED代表理事)
- ■アシスタント:SOMNEEDの海外事業コーディネーター他、インド人現地スタッフ数名
- ■成果:① 開発ワーカーにとっての重要な能力のひとつであるファシリテーション技術を向上させるために、専門家による具体的個別指導を受けることができた。
② 参加型村落開発の現場4ヵ所を訪問し、水系や植生を実際にみて、マイクロ水源プロジェクト(Micro Watershed Project)の実施と村人との関係構築の実情を知り、開発ワーカーとしての役割を模擬体験することができた。

写真15 村人が作成した図について質問する様子

写真16 今後の工期について話し合う様子