多様化する仏教寺院の社会貢献

―タイ・スタディツアーの報告―

中村 尚司

2010年2月6日~16日。参加者は計8名である。

    1.  2月6日夕刻、関西国際空港から、タイ航空の深夜便にてバンコク国際空港へ出発する。到着後、最初に訪問したウォンサニ・アーシュラム(修養道場)をはじめ、コーンケン、ナコンパトム、カンチャナブリ、トンブリなどで仏陀の教えを基礎とする諸組織による社会貢献の在り方を学んだ。現代タイ社会では、とりわけ森林派の仏教寺院による社会貢献が注目を浴びている。しかも、これらに地域では特定の教団による画一的な社会参加というより、指導者の個人的な資質に由来する活動が多く、組織にとらわれない多様な社会的な貢献が試みられている。
        たまたま筆者が前年度に「国際エンゲージド・ブッディズム・ネットワーク20周年記念集会」の基調講演を引き受けた経緯から、「エンゲージド・ブッディズムの実践現場を観る」という企画を提案したが、将来は「タイ仏教の社会貢献に学ぶ」というわかりやすいテーマの方が、望ましいと思われる。
    2.  森林派の仏教寺院による社会貢献を積極的に取り組んでいる重要な拠点が、カムキェン師とパイサン師が住職をしているターマファイワーン寺である。タイでは珍しく寺院の境内に、村の保育園が設置されている。しかし、給食設備や幼児用便所が不十分であり、JIPPOが改善事業に取り組めば、意義意味深いプロジェクトとなろう。またカンチャナブリのスワンタワナラーム寺は、日本人のアーチャン・光男師によって奨学金事業、環境保全事業、難民支援など社会貢献が行われており、今後の交流が期待される。現地で寺院との連絡などをしてくださった飯村浩氏のルン・アルン学園も、仏教思想に基づく環境教育に力を入れている。来年度以降も、国際交流を深めたいものである。

 

2010年2月6日(土) 

渡航

2010年2月7日(日)

 ウオンサニット・アーシュラムWongsanit Ashram(修養道場)を訪問する。
敷地面積はかなり広くバンガロー風の建物が十数棟あり、1泊600バーツ(約1800円)で宿泊できる。

2010年2月8日(月)

 コンケーンに向かう。ほぼ1日移動に費やした。

2010年2月9日(火)

プカオトーン寺「虹の家」でのお昼
プカオトーン寺「虹の家」でのお昼

 観光局で東北タイの地図をもらい、チャイヤプーム県ケンクロ―郡ターマファイワーン村に行く。1950年に始まる開拓村である。ここにあるターマファイワーン村のプカオトーン寺はワット・パー(森林派の寺院)である、タイの寺院には珍しく、「虹の家」という保育園を併設している。5人の職員が約47名の園児のために忙しく働いている。しかし、便所や給食施設は衛生的と言えず、感染症が心配だそうだ。
13:20ワット・パー・スカトー(スカトー森の寺)(Wat Pa Sukato)に到着する。ここで村人とともに瞑想に参加した後、カムキエン和尚に会う。80歳を超えているが元気な声で、いつでも泊まりに来てくださいという。

2010年2月10日(水)

プラタート・ナライ・チェンウェーン寺では、各時代の仏教遺跡を観ることができた。ここでは、最古のドゥラワティ仏教様式から、ラオ様式とクメール様式の建築物に、スコタイ以降のタイ様式が重なる経過をたどれる。

2010年2月11日(木)

 タイ宗教局が仏陀生誕2500年記念事業に始めた、広大なプッタモントーン仏教公園に行く。総面積2500ライの敷地に、釈尊の生誕、出家、悟り、説法、涅槃などその生涯を象徴する建造物を設置するとともに、市民の憩いの場にもしている。

2010年2月12日(金)

 8時半に出発して、ナコンパトムの新興教団であるシャンティ・アソーク(パトム・アソーク寺)を訪問する。この寺院は何でもリサイクルをしている。リサイクル品を販売し販売収益は活動資金としている。12:20からお堂でカイヤ和尚が説明をしてくれた。寺院の敷地内に村・寺・学校があり、多くの人々が修行に来ている。

2010年2月13日(土)

 午前中に映画『戦場にかける橋』で有名なクワイ川沿いの泰緬鉄道へ行く。飯村さんが関連する博物館、日本軍の捕虜の墓地などを案内してくれる。当時の捕虜たちの過酷な労働の様子を見た後、9:30クワイ川鉄橋到着。車を降りて実際に鉄橋の上を歩いてみた。観光地化されており、各国から大勢の観光客が来ていた。昭和19年2月に「日本軍鉄道隊」による捕虜や労務者の慰霊碑が建てられている。

2010年2月14日(日)

アーチャン光男師に話を聞く
アーチャン光男師に話を聞く

 アーチャン・光男師が開いた森林派のパー・スナム寺は、ビルマ国境近くの山の中にある。バンコクの華僑の資金援助と、ビルマから来たモン族難民の低賃金労働力によって、1000ライの広い敷地に、700人の合宿研修者を受け入れる施設が建設された。奨学金を出す事業を行っている。サトウキビ畑跡の植林事業、野象などの野生動物保護等の環境問題にも取り組んでいる。夏休み前に奨学生を寺で合宿させ寺の生活体験をさせる。1年に一度財団、子どもたち、支援者たちが一同に会する機会をもち、困っていることを聞きだし援助している。2つ目は森と動物と人間が共存できる環境作りに力を入れている。20年前には鹿が生息できる環境であったが、近年では鹿に限らず野生動物が減少傾向にある。村人が撒いた農薬が子象の口に入り死亡することもある。
社会を変えようとか、世界を変えようとか、教団の将来に展望を開こうとかまったく考えずに、今できることを精いっぱい行っているだけだ、という話が印象的だった。

2010年2月15日(月

 飯村さんの勤務するルン・アルン学園を訪問する。エリートの進学校であると同時に、体験学習や環境保全の学習に力を入れている。仏教が基本であり、全ての人が満足し学びたいこと・知りたいこと全てを理解できることをモットーにしている。

2010年2月16日(火) 

帰国