JIPPOはこれまでスリランカのフェアトレード事業に関連し、ウバ紅茶の産地、ハプタレーにおける農民の生活向上のための事業を行ってきました。中でもプランテーションの女性労働者が昼間子どもたちを預ける幼稚園に着目した支援プログラムは、昨年3月のタミル語による幼稚園教員研修と8月に完成したハプタレー市立幼稚園の増改築工事でタミル人茶園労働者の生活環境向上を図る支援として一定の成果を挙げました。
 しかし、この地域にはタミル人同様シンハラ人の貧困度も高く、経済の向上は困難な状況です。そうした中、シンハラクラスの幼稚園教員から「ぜひ自分たちも研修を受けたい」という声もあがり、地域全体の人材育成、教育への支援の必要性を感じて、第2回目の幼稚園教員研修をシンハラ語で今年3月に実施することにしました。
 研修には日本から幼児教育の専門家として兵庫大学短期大学部保育科講師の三井圭子さんを派遣し、実技講習を行うとともに、幼稚園の視察にも同行してもらいました。また研修の企画と講師は前回同様現地NGOのスランガニ教育基金(馬場繁子さん代表)に委託し、スリランカで求められる幼児教育に日本の知識、技術を加味した質の高い研修になりました。     
 研修や視察を繰り返すことで幼稚園の関係者だけでなく母親や地域全体の意識を高め、幼児教育向上の必要性が認識されることを期待して事業に取り組んでいきたいと思います。

2009年度 第1回幼稚園教員研修(タミル語)の評価調査結果

Ⅰ調査方法:スランガニ基金とJIPPOが相談し質問票を作成。タミル語に翻訳し研修受講者全員(40人)に郵送し、31人から回答を得た。

Ⅱ調査結果:(数字は回答数)

①研修は実用的だったか: 大変実用的だった(31)

②研修のレベルは的確だったか: 的確だった(30)、未回答(1)

③研修の場所、食事、日時などは的確だったか: はい(30)、いいえ(1)

④最も役に立ったプログラム(3つ選択): 幼稚園で学ぶこと(7)、文字練習  (2)、ゲームと歌(8)、教える環境づくり(3)、手遊び(7)、健康と栄養(6)、タミルソング(1)、救急法演習(6)

⑤配布された用具を使用しているか: 【救急箱】はいいつも(12)、はい時々(17)、いいえあまり(2) 【ワークブック】はいいつも(19)、はいときどき(12)

⑥研修で学んだことを同僚と共有したか: はい(31)、いいえ(0)

⑦研修後、幼稚園に変化や改善があったか(自由記述回答を集約): 歌、手遊び、ゲームなどの活動に積極的かつ興味を持って取り組むようになった(12)、子どもが読み書きと栄養について興味を持つようになった(2)、子どもが環境について興味を持つようになった(1)、子どもの心が成長した。教員が積極的かつやる気を持って取り組むようになり子どもの理解が促進された。ゲームを使って英語を教えられるようになった(1)

⑧研修に参加して自身の態度や考え方に変化があったか(自由記述回答を集約): 教員がよりよく教えられるようになった。幼稚園の環境を清潔かつ安全なものに整えるということを学んだ(21)、もっと研修に参加したいと感じるようになった(3)、積極的になった(2)、何らかの変化はあると思う(2)、子どもの心と体の成長について学び理解が深まった(1)、栄養の習慣に変化がみられる(1)、読み書きの概念に改善がみられる(1)

⑨研修をより良くするための提案(自由記述回答を集約): もっと研修を受けたい(25)、子どもにも研修をしてほしい(1)、保護者にも研修をしてほしい(1)、タミル語での研修を続けてほしい(1)、手遊びをもっと学びたい(1)、ワークブックがもっとほしい(1)

⑩その他(自由記述): この地方でタミル語の研修が行われたのは初めてのことでした。今まで政府もNGOも実施できていなかったのです。今後も継続していただけるようお願いします。

 

兵庫大学短期大学部保育科
講師  三 井 圭 子

1.はじめに
 パプタレー地区はスリランカ南部の中央高地にあり、3月の気候は日本の秋のような過ごしやすい所です。
 日本の春から秋の花が一斉に咲いている。ランタナ、朝顔、カンナ、ハイビスカス、アガパンサス、コスモス、バラなど、南国の花や日本では園芸店で販売されている花も、自然に咲いているのである。 
 茶畑が広がり、緑一面の中の傍の山肌面や家々の回りに花たちが咲いている。
 環境はすばらしいと思うが、そこに住んでいる人々は、当たり前で、空気のようにあまり関心がないと
いうことで、もったいない気がする。
 特定非営利活動法人(JIPPO)のスリランカパプタレー地区幼稚園支援事業として第2回の現地幼稚園教員研修がありました。スランガニ基金の馬場繁子さんが計画を立てられている研修内容の中のワークショップの1つを担当させていただいた。
日本の幼児教育の事例及び、実践を通して、少しでも教師トレーニングの研修としてお役に立つことを願っておこなった。
 また、パプタレー地区の4つの幼稚園の視察をしました。
 期間は2011年3月26日~31日の期間で、28日が3か所の幼稚園の視察 29日~30日がパプタレー地区教員研修と昨年度支援によって、園舎、園庭の改修が行われたパプタレー市立幼稚園の視察をしました。ここに報告をいたします。

2.パプタレー地区幼稚園視察

日時 20011年3月28日
(1)Omi Annal Pre-School
   園児3歳児~5歳児 55人
   教員         2人

 教員は昨年度研修を受講した。
 1保育室で机、椅子にこどもたちはとても行儀よく座っている。
 1月から登園しているということだが、3歳児が泣かないでいるのに驚く。室内は、電球が2か所外から入ると、なかなか周りが見えない。子どもも若い教員も笑顔で迎えてくれ、歓迎を込めて、何曲も歌を歌ってくれる。楽器はないように思う。すべて口伝えのようだ。一生懸命歌って聞かせてくれた。
   馬場さんの助言で、普段通りの保育をということで、外に出て、リズム体操を並んで、丸い木のおもちゃで、先生が拍子をとって、歌いながら、先生が前に立ち楽しんでいる。先生の通りにまねている。自由体形ではない。

 室内も掲示物が多く、研修で制作し、子どもが遊ぶものも、丁寧にナイロンでカバーして壁面に掲示している。室内の環境は、一面に色々と貼ってある。「とり」「やさい」「くだもの」等テーマを決めているという。
 数量、形、色,生き物や物の名前を教えている。年齢別の遊びはどのようなのかがわからないが子どもが手にとって遊ぶ物を身近に並べ置けばいいのではと思う。2人の教員で役割分担をしているようだ。
 4か所視察して、1番、教員の熱心さが伝わってくる幼稚園であった。
 清潔面では、手洗いなど、置き水でトイレと同じ場所なので、衛生面に不安材料がある。
 園庭も、下水がそのまま流れ、段差、石積みがあり、犬の糞尿もあり、子どもたちにとっては園庭とは言えない状態で遊具もなく、整備の必要性を思う。

 シャボン玉、紙風船、ゴム風船などプレゼントする。
 こちらから、差し出すまでじーとして遠慮がちな子どもたちである。

(2)Little Rose Pre-School
   園児  20人
   教員   2人

 視察の日は、小学校が試験中のため、休園しているということで室内を見る。遅れて、若い教員が来て、話を聞く。おとなしく、少々驚いている
 小学校の校舎で、小学生1,2年と1教室を合同で使用していて、園児が使っている南側の隅は机の上に、椅子が置かれ、一応片付けられている。周りの壁面の環境もわずかであった。部屋は薄暗く、電気もない状態である。木戸の窓をお昼は開けているのではと思う。
 小学生が使用しているであろう椅子等は散乱している状態である。午前中なので、小学生は、上の新しい校舎にいる。(★印の写真)
 休園する必要があるのか疑問に思った。
 小学校の校長先生が来られ、支援がなく、幼稚園へ入る子も少なく,デアーケアーセンター(託児所)からの子どもが多く、何も教えられてないので、1年生の指導に困っているとのはなしを された。トイレも使用していない。石ころ、枯れ葉が便器にたまり周辺も掃除などしていない様子であった。
 教員も無報酬のため(保育料を保護者が支払わない。支援もない)意欲がなくなっているように見受けられる。

 

 

(3)Bahradi Pre-School
     園児3歳~5歳  63人
     教員        2人

 丁度、小学生たちが帰得る途中、園児たちを迎えに来ている様子であった。
 室内では、帰る準備をして椅子にすわっている。しかし、私たちが入ると3歳の子どもたちが泣きだした。これは自然な子どもの姿で、見知らぬ大人が入って来たのであたりまえの子どもの姿である。
 食事が終わった様子の子もいて、犬も2匹教室の中に入ってきているのに、驚く。
 教員は1人で、新人のようで、あまり指示もなく、戸惑っている様子であった。
 スランガニ基金の馬場さんの歌、手遊び等で子どもたちも少し落ち着く。
 4歳、5歳は紙風船やロケットゴム風船に興味を示すが、遊び方はわからない。紙風船を手でポンポンつくと嬉しそうに笑顔を見せた。少し取り合ったり、まるめたり子どもらしいしぐさに、自然さを感じる。
 教室周辺は遊具が3台ほどあったが、地面は整備されていない。園庭らしいところも本当に狭い。しかし、掃除や土を入れて整備をすると、子どもが安全に遊べるのではないかと感じる。



馬場さんの手遊びに集中している子どもたち。

遊具の周りはやはりゴミが散乱している

(4)Haputale Montessori Pre-School(日時2011年3月29日)
    園児    30人
    教員     2人

 シンハラ人とタミル人とに分け、それぞれの教員で担当している。
 教室の机、椅子の配置も先生用の机の前に整頓されていた。
 昨年度にJIPPOの支援で、教室の増築、園庭遊具の整備などされて、遊具が数多くあった。園庭も木の葉など掃き清められていた。幼稚園の雰囲気が感じられた。
 早朝だったので、園児の登園する姿があった。
 教員が来られ、室内を案内していただき、テラス、手洗い、便所、倉庫、狭いホールの空間がありゆとりがあった。保育室内は日ざしが差し込みとても明るい。学校の授業の雰囲気がある。
 同じ敷地内のコミュ二テーセンターとの境界に、有刺鉄線が張られていたので驚く。小さな子どもたちの生活や遊びの場であるので、なるべく危険なものは避けるべきであると感じる。
 ここから入ってはいけない場所であれば、子どもに約束を守るようにするのが、教育であろう。また花が植えられているので、関心を示すことも子どもの自然な姿でもあるのではと感じた。
 遊具も多くあり、早朝だったので、子どもたちの遊ぶ姿がなかったのが残念であったが、広い園庭できっと、のびのびと遊んでいる姿が想像できる。砂場で遊ぶという活動はないの だろうか、どの幼稚園も砂場はなかった。

3.パプラレー地区幼稚園教員研修会について

 前日の夜に馬場繁子さんから、パプタレー地区の幼稚園教員の研修について、お話をお聞きした。
 昨年度は初めての研修で、タミル人の教員研修だったが、シンハラ人の教員研修もぜひして欲しいと要望があったということで、今回の実践となった。
 当日、ウプル・アマラシンハさんの司会進行で、パアプタレー市長様はじめ、行政官の方々が多数出席され、開会式が始まる。
 宗教的な開会の行事で、参加者全員の献灯から始まり、東日本大震災の犠牲者への黙とうを奉げていただいた。

 パプタレー市長様からのメッセージをいただき、研修会が始まった。
 35人の教員の皆さんが長机に座り、スランガニ基金の馬場繁子さんの研修プログラムの進行となる。
 新任の先生から、30数年のベテランの先生までの、経験の差のあるメンバーであるが、皆さんの意欲が感じられる。
 一人ひとりに、今回の研修資料が配布され、赤いバッグの中には、テキスト、ノート、スランガニ基金の活動の広報が入り、救急セットも配布される。

 研修は、8時30分からオープニングセレモニーから始まり、1つの講義1時間~1時間30分で午後4時5分までぎっしりつまっている。


 右は研修プログラムである。
 馬場繁子さんによる、イングリッシュソング手遊びや体全体で前後、左右に動かす身体表現遊び。日本でもよく遊ぶ、わらべ歌遊びに通じるロンドブリッジ、輪になって遊ぼう、糸まきまき等、曲などで分かる。子どものようにはしゃぎながら、明るい顔で、履物を脱いで素足で、楽しんでいる姿があった。

 体を動かした後は、丁寧にテキストを見ながら復習をする。歌詞を覚える、子どもに何を教えているかを、具体的な説明がある。
 子どもたちにも、英語に親しんでいくというねらいがあり、日常よく使う英語の単語での歌、身体表現遊びであった。
 教員は教えるという立場であることの意識が伝わる。
 遊びから学びがあるというところまではいかない。
 そこで、幼稚園の視察、教員研修の参加をさせていただいて、教師トレーニングということが私なりに理解できたように思う。

 

 


担当のワークショップについて
 子どもと教師が楽しむものとしての1つ、手遊び、パネルシアターをする。
 「キャベツの中から」と世界中知られている絵本「おおきなかぶ」である。
 馬場さんに、シンハラ語に通訳していただきながら進める。
 日本の幼稚園の教育は、子どもの興味や関心を示す「遊び」を中心に幼児教育をしていて、子どもともに楽しめることを教師は考え、工夫することを伝えながら、パネルシアターで、話や歌を入れながら
進める。教師はしながら、子どもも参加できるようにしていくことをも説明する。
 手遊びも、馬場さんの研修の中での手遊びを経験されているので、興味をもっていただいた。
 パネルシアターはお話を進めるだけではなく、演じるものが、見ているが側も参加できるように、
 身体表現も入れながら楽しく進めることに努めたが、どこまで感じていただいただろうか。
 しかし、にこやかにあるいは真剣なまなざしを感じることができた。
 あと2~3グループで、2種類のパネルシアターを楽しそうに演じていた。パネルの中の、キャベツ、ちょうちょ、花、皆さんの身近に見る物で、理解していただいたようだ。

 この後、プログラム通りに研修は進む。幼稚園の安全管理や、整理整頓の方法を、お茶の水女子大学 子ども発達教育センターの「幼児ハンドブック」からの写真パネルを掲示、講義された。
 午後からは歌唱指導と表現遊び、絵カードを使った、数、量、大小などを教える方法の講義であった。
 意味としては、5領域の内容が含まれている。教員は子どもたちを指導する立場としてのトレーニングで指導方法を身につける研修であると感じた。技術、技能を養成する立場として、相通じる面もある。


5.おわりに

 気候や、自然環境はとてもよく、人々は笑顔で毎日幸福に日々を過ごしていると感じる半面、経済的な支援を必要としている面もある。国民性、文化、習慣もそれぞれあるが、そこにいる教員の皆さんが、創意工夫することで改善される部分がまだまだあるのではないか、その方法を見出すとよりよい幼児教育ができるのではと思う。豊かな身近な自然を保育にとり入れると、子どもの遊びがもっと広がるのではと感じた。大人が教えることと、子ども同士で学びあうことが大切であることを気付く
 機会をこれからも作ることが大事であると感じた。
 現代の日本は物質面の豊かさはあるが、精神面の豊かさが問われている。そこにも、創意工夫が必要なのである。
 スリランカパプタレー地区の教員研修会に参加させていただき、幼児教育を教員の立場からと子どもたちの立場からとを考える貴重な機会を与えていただいたことに感謝して、今後、保育者養成校の指導的立場の一員として、研鑽を積んでいきたいと思う。